NASA、飛行士支援ノウハウ提供へ…落盤事故

【ワシントン=山田哲朗】南米チリ北部の鉱山に作業員33人が閉じこめられた落盤事故で、米航空宇宙局(NASA)の専門家が今週にも現地入りし、国際宇宙ステーション(ISS)など閉鎖環境に滞在する飛行士に対する精神面、身体面での支援のノウハウを提供する。

 ISSは90分で地球を1周し、時間感覚がなくなるため、飛行士らはスケジュールどおりに食事や睡眠をとって24時間のサイクルを保っている。さらに筋肉や骨が衰えないよう、飛行士は毎日決められた時間、運動をこなす。こうしたISSの環境は、鉱山の中とよく似ている。さらに精神面では、精神科医が飛行士と一対一で定期的に会話しているほか、宇宙飛行士の経験者1人が地上側を代表してISSとの交信に当たるなどの手法が確立。こうした経験から生み出された独特の手法が応用できる可能性がある。

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 ISSなどでの日本人宇宙飛行士の健康管理に携わった宇宙航空研究開発機構の井上夏彦主任開発員は「劣悪な環境での4か月を乗り切るには、心理的なサポートが不可欠だ」とし、〈1〉情報提供〈2〉家族との対話〈3〉有名人による励まし〈4〉個人空間の確保〈5〉規律を持った生活〈6〉楽しみの発掘―― などの有効策があると指摘する。中でも今後の作業計画を含めた救出作業に関する情報で、外部への不信感を招かないようにすることが大事という。次いで、ISSでも実施している家族と会話する機会を設けることや、芸能人や大統領などの呼びかけも心を癒やすのに役立つ。

 個人に必要な空間は、一般的に1人当たり約10立方メートルと言われる。シェルターでは、この広さを確保するのが難しいため、ある程度ばらける時間帯を設けることも、対人トラブルを減らすためには有効という。